クラスメソッドのビジネスモデル転換のストーリー ~ 鍛冶屋から武器屋へ ~

クラスメソッドのビジネスモデル転換のストーリー ~ 鍛冶屋から武器屋へ ~

Clock Icon2017.09.01

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はじめに

事業開発を担当している石島です。 事業開発部は、新規事業を作ることを通して、会社全体のビジネスモデル転換を図ってきました。事業開発部を立ち上げて、今日でちょうど3周年です(ついでに、私も入社して3周年です)。 ありがたいことに、この3年でたくさんの新しいことにチャレンジすることができました。この3年の軌跡を、記念のブログとして書いてみます。

ちょっと長いので、よろしければお時間のある時に読んでいただけますと嬉しいです。

 

事業開発部って?

新規事業を作るための部署です。3年前に1人で始まって、今はパートナーさん含めて30人くらいのメンバーがいます。 他の部署の新しい取り組みを側面から支援したり、部署内に新規事業のためのチームを作って育てたりしています。 今のクラスメソッドは、各部署が常に新しいことに取り組んでいますので、そのすべてに関わっているわけではありませんが、会社として次はどこにいくのかを見据えて、色々な手を打つことをやっています。

大きな流れ① ~ ワンショットからストック型へ

3年前のクラスメソッドは、技術に強いエンジニアが、お客様のご要望に応じてオーダーメイドでものづくりをしていました。Developers.IO やコミュニティ活動を通じて、技術に関して情報発信を続けていたため、多くの大手企業と繋がりをもつことができていました。 しかし、オーダーメイドのビジネスは、作り終わったら終わってしまう、ワンショットのビジネスです。 売上と利益を安定させることは難しく、そのため新しいことへの投資もなかなか難しい状況でした。 これをクリアするために、ストック型のビジネスモデルへと転換を図っていきました。

大きな流れ② ~ 鍛冶屋から武器屋へ

オーダーメイドでのものづくりを鍛冶屋としたら、先にサービスを作って「これを使ってください」と提供することを武器屋と表現しています。事業領域や扱う技術を絞ることができれば、自然と同じような案件が増えてきてノウハウが貯まって、サービス化を検討しやすくなります。サービスであれば、早く安く提供することができ、ビジネスをスケールしやすくなります。

大きな流れ③ ~ 技術軸からお客様の悩み軸へ

クラスメソッドの部署は、エンジニアが多い会社らしく、基本的に技術軸で分かれています。 AWS、モバイルアプリ、ビッグデータ、Alexa などです。各部署の独立性は高く、それぞれが異なる市場と向き合い、ビジネスを完結させています。 しかし、これらをもっと大きな絵にして、お客様により刺さるサービスを提供できないか?と試行錯誤を繰り返しました。 結果的に、マーケティング・システムという絵にして、さらにサービス軸で EC と CRM を加えることにより、主に事業会社の CMO や CIO、そのラインの方々の悩みに応じて、様々な引き出しを提供できるようになってきました。

3年前 ~ データ分析基盤のビジネスの立ち上げ支援

事業開発部を立ち上げて最初に担当したのは、データ分析基盤ビジネスの立ち上げです。 クラスメソッドの強みの1つに、代表の横田さんの技術の目利き力と突破力があります。 来る!と思った技術をすぐに試して、お客様を巻き込んで事例を作ってしまうのです。 当時、AWS の DWH の Redshift と、BI ツールの Tableau という技術に着目し、いくつかのお客様で事例を作っていました。 これを引き継いで、点から線、面へと発展させて、事業化することにしました。

パンフレット抜粋 「当時作成したパンフレットです」

ベネフィットと顧客の定義、サービス構成と価格モデルの作成、チーム作りと採用活動、マーケティング活動、パートナーとのエコシステムの構築、営業活動など、事業化に必要な活動を行いました。 最初、2案件連続失注してしまって、ちょっと辛かったですが、失敗から学んで色々改善したこともあり、以降は連続受注して、バックオーダーを抱えることができました。

データ分析のビジネスは、DWH などのインフラ基盤や分析のための BI ツール、そこに貯めるデータの収集と管理、それらのデータを活用する分析サービスなど、複数のレイヤーから成り立っています。さらに、これをオンプレとクラウドのどちらでやるのか、でもあり方が大きく変わってきます。 試行錯誤の結果、クラウド(AWS)でのインフラ基盤と BI ツールの提供に特化しました。 このレイヤーであれば、お客様毎の業務に踏み込まずに技術で勝負でき、ある程度定型化した早く安くスケールする基盤を横展開できると見込んだためです。

結果的に、資生堂様やビームス様など、数10社の大手企業にデータ分析基盤を提供でき、データインテグレーション部へと引き継ぐことができました。 データ分析基盤は、日々新しいデータソースを取り込み、新しい切り口でデータを引き出せるようにする必要があるため、継続的なメンテナンスが発生します。これを保守として提供することにより、ストックビジネス化しています。 さらに、事業領域を絞ったことによりノウハウが蓄積し、現在はカスタマーストーリーアナリティクスというサービスとしても提供しています。

3年前 ~ オムニチャネルアプリのビジネスの立ち上げ支援

次に、オムニチャネルアプリのビジネスの立ち上げの支援を担当しました。 当時のモバイルアプリのビジネスは、数人月程度の規模の多種多様な案件を、オーダーメイドで対応していました。 モダンな技術を用いて小気味よく案件を回して実績を積むことにより、お客様から指名をいただくこともできていました。 そして、次の展開をどうするのか?を検討しているところでした。

提案書抜粋

「当時の提案書のシステム構成図です」

代表の横田さんと、モバイルアプリサービス部(当時はiPhoneアプリサービス部)の部長の大橋さんと、3人で何度も議論して、大手企業向けのオムニチャネルアプリを提供していくことにしました。 継続的な投資を見込むことができ、共通化できる機能が多くサービス化しやすいこと、そして世の中の多くの人に使ってもらえるアプリを作りたい、というのが理由です。 中には、お客様はアプリが欲しいのではなく、良いアプリをユーザーに提供して満足してもらいたいのだから、アプリはタダで提供してユーザー数に応じた従量課金にしよう、という大胆な試みもありました。

モバイルアプリのビジネスは、スマートフォン向けのアプリの開発、バックエンドのサーバーサイドの開発、アプリに乗せるコンテンツ作成や関連する業務運用など、いくつもの領域があります。 さらに、ユーザー数が1万人と1,000万人とでは、作り方もシステム構成も全くの別物です。 そこで、アプリとサーバーサイドを一体のものとして提案し、スケールさせることを前提にクラウド(AWS)ネイティブなアーキテクチャを採用しました。

結果として、すかいらーく様などの大手企業にオムニチャネルアプリを提供することができました。 継続的な開発と保守が発生し、ストックビジネス化しています。 また、当初は技術優位でしたが、その後デザイナーの採用と育成に力を入れ、アプリや体験価値のデザイン提案も厚くなりました。 さらに、事業領域を絞ったことによりノウハウが蓄積し、現在はカスタマーストーリーモバイルというサービスとしても提供しています。

2年前 ~ カスタマーストーリー構想と One Classmethod への取り組み

データ分析基盤やオムニチャネルアプリのビジネスに関わり、多くのお客様の声を聞き実情を知り、1つの疑問が湧き上がってきました。 データ分析もアプリも、いわゆるマーケティング系と言われる領域のシステムです。 この領域には実に様々な事業者が提供するサービスがありますが、それらは点であり、ユーザー企業が使いこなすのは容易ではないのではないか。 大手システムインテグレーターがトータル提供していますが、変化の早い領域だからこそ、フットワーク軽く動けるクラスメソッドのような会社が活躍できるチャンスがあるのではないか。

カスタマーストーリー_システム構成図

「当時の社内向け説明資料のシステム構成図です」

カスタマーストーリー_概念図

「当時の社内向け説明資料の概念図です」

そこで、カスタマーストーリーという構想を立ち上げました(元々はデータ分析基盤のサービス名だったのですが、概念を格上げしました)。ユーザーと最も深く繋がるモバイルアプリと、その行動データを蓄積して PDCA を回すためのデータ分析基盤を軸として、周辺の EC や CRM、MA、Web などはパートナー企業とエコシステムを作り、インフラには AWS を採用し、クラスメソッドがハブとなってマーケティング・システムをトータルで提供する、というものです。

この構想を推進しようとしたら、代表の横田さんが、当時流行っていた「One + 社名」を引っ張って、「One Classmethod」と言い出してくれました。ストックビジネス化や自分たちでサービスを作って使ってもらおう、という流れにも乗って、多くの社員が協力してくれました。本当に感謝しています。

実案件として最初に実現したのは、すかいらーく様でした。複数の部署でチームを組んで1つの案件に対応する初めての事例でした。お客様には見えないように、裏側ではたくさんの調整仕事で苦労しましたが、良い思い出です。並行して、営業活動をしながら、様々なリクエスト=アイデアをいただき、徐々に形を作っていきました。しかし、この頃は、まだ数社への提供にとどまり、エコシステムも緩やかなものでした。その後、プリズマティクスの立ち上げをもって、方向性が定まっていきます。

また、この頃、関連して2つの仕掛けをしています。1つは、システムに加えて、システムを使って成果を出すところまで支援するために、業務運用コンサルのチームを立ち上げました。もう1つは、この新しい取り組みを広く知ってもらうために、マーケターとアートディレクターからなるマーケティングチームを立ち上げました。現在、前者は実績を積み形ができつつあり、後者はマーケティング部の設立と同時に合流しています。

1年前 ~ 製品開発チームと新会社プリズマティクスの設立

ストックビジネス化、サービス化(武器屋化)をさらに推進して、クラスメソッドが次のステージに進むためには、ソフトウェアの力が必要だと考え、製品開発チームを立ち上げました。ちょうどその頃、良品計画の濱野さんと代表の横田さんと3人で、世の中の小売り企業が抱える課題についてディスカッションしていました。スマートフォン、ソーシャルメディアが浸透し、消費者の購買行動は大きく変わってきているが、対応できている企業は少なく、これらの課題を解決するためのプラットフォームを提供できないか?というお話です。

プリズマティクス_概念図

「prismatix の概念図です」

そこで、EC と CRM 構築のための API プラットフォーム prismatix を提供することにしました。この実現のために、2016年11月にプリズマティクス株式会社を設立し、濱野さんに CEO 就任をお願いしました。この prismatix がハブとなり、クラスメソッドの各部署のサービスはもちろん、様々な事業者が提供しているサービスとも繋がる絵を描くことができました。そこで、製品開発チームのすべてのリソースを prismatix に投入することにしました。

プリズマティクスの特徴として、マーケティング分野における経験が豊富な専門家によるアドバイザリーチームの存在があります。オイシックス(元・良品計画)の奥谷さん、リノシス(元・すかいらーく)の神谷さん、リノシス(元・あきんどスシロー)の田中さん、ローソン(元・キタムラ)の逸見さん、達です。このアドバイザリーチームが、経営者やマーケターが抱える事業課題から相談に乗りつつ、小売り企業の未来を見据えてあるべきサービスの姿をプリズマティクスに提言してくださっています。

もう1つの特徴として、prismatix の導入を支援する認定パートナーによるエコシステムの存在があります。前述のオイシックス、リノシスの他に、チームラボ、リヴァンプ、ユニット・ワン、パルコデジタルマーケティングが現在認定パートナーとなっており、システムインテグレーションやコンサルティングなどのサービスを提供しています。

現在 ~ プリズマティクスの立ち上げに集中

多くの方々のご協力をいただき、2017年2月にパルコ様向けにファーストリリースすることができました。Webサイト、モバイルアプリ、店舗間のデータ連携を実現し、オムニチャネル戦略を支援しています。ありがたいことに、他にも数社でご採用いただき、それぞれリリースに向けて開発を続けています。prismatix は、ハブであり、様々なデータが流通するので、アイデア次第で色々な仕掛けをすることができます。お客様、消費者、さらには小売業界全体にとって価値のあるサービスとなり、経営者やマーケターにとって価値のある武器となるべく、これからも事業活動を続けていきます。

PARCO様事例資料

「パルコ様事例のシステム概念図」

現在の事業開発部について、少し触れます。現在の事業開発部には、様々な専門家がいて、新規事業を推進しています。事業企画、プロダクトオーナー、システムアーキテクト、ソフトウェアエンジニア、SRE、品質管理、サービスマネージャー、プロジェクトマネージャー、デジタルマーケティングコンサルタントなどです。常に新しいことに取り組んでいますので、たくさんの困難と学びがあります。事業拡大中につき、もし面白そうだな、と感じた方がいましたら、カジュアルにお話させていただきたいです。

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最後に、この3年間、一緒に仕事をしてくださった皆様、本当にありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。

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